小学校理科の時間は築地先生という方がもたれていた。目の奥の優しい先生で、耳が聞こえにくい子の担任でもあった。
教室のなかだけでの授業は少なく、観察園と呼ばれる学校横の庭のような場所へ出てやることが多かった。
観察園は最低限の整備はされていたが、自然を自然のままにしてある場所だった。
ポケット図鑑を見てから実際に観察しに行ったり、自由に観察してから図鑑を見たりを繰り返す。たまに描き記す。
(そのまま、自由観察と呼ばれていたかな)
そこで小さく何かを育てたり、先生か用務のおじさんが育てたものを見たり。少しだけニワトリもいた。赤い実やきのこ、石を裏返すとベンジョムシ。手がまわらないほどの大木がいくつもあって、夏は木陰が涼しかった。
カブトムシの立派な幼虫の記憶は、図鑑だったのか実際に見たのか。図鑑と実物の往復で、どっちだったのか覚えていない。
白く四角い箱が窮屈でしかたなく、他の先生とも上手くいかなかったから、あの場所と授業があったおかげでギリギリ不良になりきらずにすんでいた。
皆も窮屈に感じてただろうか、観察園が好きな子は多かった。